「マネジメントだけは絶対にやりたくない」
アメリカでフルタイムのシェフとして働いていた頃、僕は常にそう思っていました。
立場としては主にスーシェフ(二番手)。クリエイティブに料理を作り、現場のチームをまとめることも、
「ヘッドシェフ」として店舗全体を管理・経営する立場になりたいとは、一度も思ったことがありませんでした。
ミシュランの星を獲得して以来、LinkedIn(仕事版SNS)のインボックスには毎日のように世界中のレストランや企業からオファーが届くようになりました。
中には、年俸30万ドル(約4,500万円以上)という提示もありました。
もしあの時、僕に
「アメリカでトップシェフとして上を目指す」

という野心があったなら、今頃はその高額オファーを受けて海外で成功を収めていたかもしれないし、自分の店をアメリカで立ち上げていたかもしれません。
しかし、僕が選んだ道は全く違うものでした。
世界中からのオファーをすべて断り、日本へ帰り、父の経営する「みやこんじょ」を継ぐこと。
傍から見れば誰もが欲しがる永住権を捨て歴史的な円安の状況で日本に帰国することは不思議な選択に見えるかもしれません。
けれど、この決断こそが僕の人生の新しいストーリーの始まりでした。
逃げ続けてきた「マネジメント」という高い壁
日本に帰国してからの生活は、一変しました。
これまでアメリカでずっと避け続けてきた「マネジメント」という課題が、目の前に立ちはだかったのです。
- スタッフのシフト作成や労務管理
- チームメンバーからの相談に乗るメンターとしての役割
- 集客や売り上げのための戦略立案
実際にお店に立つことは、全体の業務の一部に過ぎません。
その裏側には、これまで経験したことのない膨大な量の仕事が待っていました。
しかし、不思議なことに、これがまったく苦ではないのです。
むしろ、心から楽しめている自分がいました。
なぜなら、これは他の誰でもない「自分自身が選んだ道」だからです。
温かいお客さんに恵まれていることはもちろん、何よりも
「自分のアイデアを自分の手で形にできる」
という環境が、これ以上なく面白いと感じています。
寿司イベントの企画、SNSを活用した新しい情報発信、ネットでの予約システムの構築、リピートしてもらうための接客の仕方——。
どうすればもっとお客さんに喜んでもらえるか、どうすればお店としての価値を高められるか。
そのすべてが、これからの僕の手腕にかかっていると思うと、ワクワクして仕方がありません。
幸いなことに、父は「龍の好きなようにすれば」と言います。
経営に関して口を出されるストレスがない分、思い切った挑戦ができる環境にはありがたいです。

二代目のジンクスを覆し、揺るぎないチームを作る
今、僕が直近で掲げている目標は明確です。
「みやこんじょ」を、スタッフみんなが誇りを持って働ける強くて働きやすいチームに育て上げること。
そして、将来いつ発生するかわからない地震や感染症などの有事の際でも、絶対に潰れない強固な財務基盤(資金力)を作り上げることです。
世間ではよく、
「二代目は会社を潰す」なんて言われたりします。

けれど、僕はそのジンクスをこの手で絶対に覆してみせます。
もしこの挑戦を成功させることができたなら——アメリカに残っていれば掴めたかもしれない「アナザーライフの成功」を1ミリも悔やむことなく、
「自分の選んだ道は正しかった」
と胸を張って言えるはずです。
逃げずに挑むと決めたこの場所で、僕は僕の「最高の店舗」を作り上げていこうと思います。
これからの「みやこんじょ」と僕の挑戦を、ぜひ見守っていただけたら嬉しいです!
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