新宿みやこんじょ継承記No.32 〜日本のいい部分に目を向けてみる〜

アメリカ12年を経て実感する「日本のコスパ」と僕の決意

いよいよ、5月13日の日本帰国が目前に迫ってきました。
2014年に海を渡ってから始まった僕のアメリカ生活も、丸12年。

さて、最近SNSのタイムラインを見ていると、
日本の税金や社会保険料に対する悲鳴に近い投稿をよく目にします。

「総支給50万(年収600万円)でも手取り38万。
10万以上引かれるなんて、日本の税金はあたまおかしい。
国のせいで貧乏なのは日本くらいじゃないか?」

そんな言葉が並んでいます。
ポジティブなことよりもネガティブなことの方が目につきやすいものです。

確かに、自分が汗水垂らして稼いだ給料から、
毎月10万円、20万円と自動的に「中抜き」されていく感覚は、
精神的にくるものがありますよね。

でも、アメリカで12年間、寿司シェフとして、
そして一人の生活者としてサバイブしてきた僕の目には、
少し違う景色が映っています。

「手取り」という数字の裏側に隠されたコスト

アメリカは、確かに時給を日本円で換算すれば
マクドナルドのアルバイトでも2500-3000円と「稼げる国」のように見えます。
特に技術のある職人であれば、額面の金額は日本よりもずっと夢があるかもしれない。
でも、その「多い手取り」で、僕たちは一体何を買っているのでしょうか。

アメリカ生活は、常に「リスク」との背中合わせです。
もし、夜中に突然、猛烈な腹痛に襲われたら?

僕が自転車で転倒して病院に行った時
塗り薬とレントゲン撮りましたが

1500ドル(約20万円)の支払いでした。

民間の高い保険に入っていても、自己負担額が数10万円になることはザラです。
しかもそれは後から手紙で送られてくる。
病院行った後は気が気でなりません。

僕はスポーツが好きで、ずっと野球をやりたいと思っていました。
ただ怪我をして仕事を休まなければならないリスクや
不明瞭な病院代が怖くてずっと我慢していました。

アメリカは一見、高い給料をもらっている様に見えますが

「生きるためのリスクをすべて自分の現金で解決しなければならない」

ということです。

一方で、今の日本はどうでしょうか。
確かに手取りは減りました。
でも、その減った分で、僕たちは

世界最強のサブスクリプション」

を契約しているようなものだと思います。

日本が誇る「コスパ最強」のインフラ3選

僕が日本に戻るにあたって、改めて

「これは凄いな」

と感じているポイントを3つ具体的に比較してみます。

① 医療:破産リスクをゼロにする安心料
日本の健康保険は、世界的に見ても驚異的なシステムです。

  • 高額療養費制度: どんなに高度な手術をしても、一般的な所得なら1ヶ月の支払額は約8万円程度が上限です。
    300万円の請求書に怯える必要はありません。
  • フリーアクセス: アメリカでは「自分の保険が使えるネットワーク内の病院」を探すだけで一苦労ですが、
    日本は近所の専門医にいきなり診てもらえます。
  • 歯科・眼科までカバー: アメリカでは別料金の高額なオプションが必要なこれらも、
    日本では保険証1枚で安価に受診できます。

毎月引かれる社会保険料は、言わば

「病気になっても人生が詰まない」

ための、世界一効率的な保険料だと思います。

② 治安:1億円の住宅街の価値を「無料」で享受する
アメリカで「夜中に一人でコンビニに行ける」「子どもが一人で電車に乗れる」
環境を手に入れようと思えば、それは膨大な「目に見えないコスト」がかかります。
治安の良いエリアに住むための高額な家賃、
子どもの習い事へのすべての送迎時間……。
これらを時給換算すれば、年間で数100万円分の価値に相当すると思います。

新宿のような世界有数の繁華街であっても、一定の安全が公的資金で守られている。
日本人が「当たり前」だと思っているこの安全は、海外では

「高額な現金を払った人だけが買える特権」

だと思います。

③ 子育て:東京という「最強の支援都市」
僕が東京に戻るにあたる理由の一つでもあります。

特に今、東京都の子育て支援は突出しています。

  • 医療費: 高校生まで実質無料。
  • 教育: 第2子以降の保育料無償化、私立高校の授業料助成の拡充。
  • 食事: 公立小中学校の給食費無償化。

これらをアメリカの私立学校やベビーシッター費用と比較すれば、
日本で「引かれている税金」以上の恩恵を、
子育て世帯は確実に受け取っています。

「現金の多さ」か、「生活の質」か

結局のところ、日本とアメリカのシステムの違いはこう整理できると思います。

  • アメリカ: 手取りは多いが、リスク(医療、教育、治安、老後)はすべて
    「自分の現金」で解決しなければならない 「自己責任・高コスト」モデル
  • 日本: 手取りは減るが、多くのリスクを社会全体でシェアしているため、
    少ない現金でも一定以上の生活が保障される 「相互扶助・低コスト」モデル

月50万円で手取り38万円という数字だけを見れば、確かに寂しく感じるかもしれません。
でも、その外側にある「医療」「治安」「教育」という、
アメリカでは数千万円払っても足りないほどのインフラを、
僕たちは月々10数万円のサブスクで享受している。

そう考えると、少し景色が変わってくるのではないでしょうか?

「みやこんじょ」という城を継承する覚悟

もちろん、今の日本のシステムに課題がないわけではありません。
現役世代の負担が増え続け、少子高齢化で将来への不安が消えないことも事実です。
税金の使い道が不透明に感じたり、
負担ばかりが先行して増えていく現状に、
不信感や憤りを感じる人が多いのも当然のことだと思います。

でも、「国がどうにかしてくれる」とただ期待したり、
「国に搾取されている」と嘆くだけでは、
自分の人生の舵を他人に預けているのと変わらないのかもしれません。

大切なのは、たとえ完璧ではないにせよ、
今そこにある日本のインフラを「使い倒す」くらいの気概で、
僕たち現役世代がどう動くかではないでしょうか。


確かに納得のいかないことも多い世の中ですが、
SNSの悪いニュースで心を消耗させてしまう前に、足元にある

「利用できる価値」

に目を向けてみる。それもまた、今の時代を賢く生き抜く一つの方法かもしれません!

マスター

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この記事を書いた人

宮崎居酒屋「みやこんじょ」二代目。
アメリカで寿司職人を経験後、父の店を継ぐ決意をしました。
人と人がつながる場所としてのみやこんじょを、次の世代へつないでいきたいと思っています。
二代目としての日々や、店のリアルを発信中。